無題
千年も待つ恋なら
汝 眼前の者を愛せよと
けもの道で僧が宣う
生きている時間を無駄にするのは簡単なこと
執着に縛られたまま
身じろぎもせず
ただただ彼の人と再び
針の穴を通すような偶然を
ただただ念ずるのみ
何時訪れるとも訪れないとも
ただただ
気配だけを研ぎ澄ませ
疲れ果て夢うつつ
また百年過ぎ
ただただ
そこに座す
眼前に生きそして去る者幾度
かなしむことなく花を手向け
里に生きる意味も忘れ
苔石は朽ちても
それは朽ちる事を知らない
ただただ
佇むのみ
ーーー夢物語ーーー